だれもが得られる「特効薬」と「活力源」

 「一億総半病人」という言葉が生まれたのは今から約10年ほど前の事であろう。日本国民のほぼ総数が、疲れやすい、やる気が出ない、いらいらする、良く眠れない、肩こり、腰痛、頭痛があるなど、何らかの軽度の症状を抱えながら生活しているということを表した言葉である。最近では、二十代の若者たちにも、血糖値が高い、高コレステロール、高脂血症などのいわゆる「ドロドロ血液」の若者達が増えてきているということだ。これは食生活はもとより、不摂生な生活と慢性的な運動不足の結果だという。

 ある研究グループが非常に興味深い幾つかの実験を試みた。「半病人」的症状をもつ日本の20代の若者達に毎日十分間のウォーキングをするように勧めた。あるOLは自転車の通勤を歩行に、ある青年は駅から五分の所を遠回りして十分間歩くといった具合に、数日間続けた。その結果、彼らの血糖値、コレステロール値、中性脂肪値は、それぞれ10〜30下がり、疲労感や肩こり、冷え性などの症状が改善されたという。また別の青年グループでは、十分間の歩行を一回しただけで、細菌をやっつけるリンパ球の増加が見られ、免疫力が増すことがはっきりとわかった。同様にして十分間ウォーキング後の被験者の血液には、心に落ち着きと穏やかさをもたらし、また快眠をも促すセロトニンという物質の増加、女性ホルモンを構成するエストラジオールの増加などが現れたという。また脳への血流量が増すために、記憶力と集中力のアップが見られ、ウォーキング前にチャレンジした十桁の数字の暗記も、ウォーキング後に試た記憶の方がまちがいなく覚えられたということだ。

 たった十分間の毎日のウォーキングが、心、身体、知性の状態を向上させてくれるなら、本誌でネドリー博士が提案している「1日30分」歩行を実践するなら、さらに活き活きとした毎日が得られるであろう。言うなれば「歩行」はあらゆる病気の「特効薬」であり、「活力源」であるようだ。そうであれば無料の「効薬」を利用しない手はない。国民「一億総ウォーカー」になって、多くの人々が真の健康感を味わいつつ、活力ある幸福な人生を送ることが出来たらどんなにかすばらしい事であろう。迎える新しい年、NEWSTARTの「E」を日課に加えて「E(良い)一年」とならんことを。
トータルへルス誌17号 巻頭言より
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