信じる力―癒しの力
 同じ薬を処方されても、患者によってその効果に違いが出てくるが、その差はどこから来るのだろうか?多くの場合は、プラシーボ効果にあるようだ。

 医学業界では、新薬は従来の薬よりも常に効果があるとされている。その理由は、テキサス州立大学健康科学センターのブレア・ジャスチス氏によれば、製薬会社が派手にアピールする宣伝によって、医者たちの期待感が増し、それが患者に伝わって実際効き目も現われる。しかし、時と共に、効果や副作用の程を見るにつれて、その薬に対する医者たちの扱いが次第にマイナス方向になってきて、その影響もまた患者の上に現われてくるからだと述べている。

 「効くと信じるなら効く」というプラシーボ効果というものは、かなりの力がある。ある研究では、むかつきを抑える強い薬だと言われて薬を飲んだ患者は、実際にむかつきが治まったが、実はその薬はむかつきを起こす強い薬であったという。このようなプラシ−ボ効果は3人に1人の割合で現われ、その治療や薬によって自分は治ると固く信じるなら実際に治るそうだ。治癒効果に影響を与えるものは、その治療法が患者自ら選択したものであり、確信を持って行っているか、医師や治療者への信頼度、また治療コストが高ければ治癒効果も高いと思うところにもまたプラシーボ効果が現われやすい。

 こうした効果は必ずしも医者や薬を通してのみ得られるのではない。自らの頭脳からもよく効く強力作用の薬を生み出すことができる。自分に振りかかってくる全てのことをプラス思考でとらえ、そして万事が益となるということを信じる者の力は偉大である。ある50代の婦人が体調の不調で診察を受けたが、すでにガンの末期状態で余命あと2ヶ月と宣告された。不意の宣告と、思わぬ事態のためにたじろいでしまうところであるが、彼女はこれまでの人生で培ってきた「信頼」の気持ちをこの事態にも積極的に働かせた。万事は益となる。それは自分にとっても家族にとってもそうである。であるから感謝しようと言って、腹水も胸水もたまって苦しい中からさえも「信頼」と「感謝」の思いを強く持ち続け、周囲の人々にも言い表した。その結果、彼女のガンは10ヶ月足らずで完全に消失したのである。

 体のどこかに傷を受けると、体は直ちに傷を癒す働きを始めてくれる。これは事実である。このように人の体には病気に打ち勝つ力が備えられていることを固く信じることは何よりも強い癒しの作用をもたらすであろう。

参考文献"Total Wellness", Joseph Pizzorno, N.D.
トータルへルス誌19号 巻頭言より
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