良く噛めば頭脳は明晰、百歳にしてなお前進あるの

仕事において業績を上げる、家庭の幸せを築く、健康の維持回復をはかるなど、人それぞれに「こんな自分になりたい」という望みを抱いてあらたな年を迎えたことであろう。いつの時代にあっても自己の夢を実現していく人々は、計画性と実行力があることはもちろんだが、その土台となる健康管理が必須であることを決して忘れてはいない。一見些細に思えることであっても健康を維持するために適切な何かの事を日々実践している。

f地(しょうち)三郎博士はそのモデルのような人物である。博士は福岡市在住、今年八月で満百歳を迎える医学・文学・哲学・教育学博士だ。福岡教育大学で教授を務めていた五一歳の時、障害児の通園施設「しいのみ学園」を創設し、現在も園長を努めている。六三歳の時に独学で韓国語の学習を開始、十年後には、現地の大学で韓国語による講義を行うほどに熟達した。九十六歳の時には中国からの招待を機に中国語を学び始め、昨年は英語、韓国語、中国語を駆使し世界一周の講演旅行を実行した。これだけのことを成し遂げるのは余程健康で無ければ難しい。実はf地さんは子供の頃身体が弱かった為、母親から良く噛むことを教えられ、以来一口三〇回噛むことが習慣になった。彼は「良く噛めば百歳まで元気で生きられます。私がその証人です」と言っている。噛むことと脳の発達には深い関係があり、ある測定によるとf地さんの頭脳は三十歳と診断された。

咀嚼は明晰な頭脳をつくるばかりではない。唾液の中には活性酸素を取り除く物質があり、よく噛めばガンや心臓病、高血圧、糖尿病などの予防と回復に役立ち、さらには老化防止にもつながる。視力向上、アレルギー疾患の予防なども期待できるという。「何を食べるか」には注意を払っても「良く噛む」ということは忘れがちなことである。実際には玄米や豆類などは60回程度の咀嚼が望まれ、食物がクリーム状になるまでに噛むことが理想だ。これを習慣づけるには、まず食事のたびに意識しなければならない。相当な努力が要るが、続けていくならば、やがて良く噛む習慣の果実―強い体と明晰な頭脳―が期待できる。f地さんは今年の書き初めに「百歳にして前進有るのみ」としたためた。私たちもさらに前進! 夢実現のための計画表に良く噛むこと、一口最低30」と書き記そうではないか。

f地三郎博士に関するサイトhttp://www.bekkoame.ne.jp/~kogatac/

参考資料 噛めば体が強くなる 西岡一著 草思社


トータルへルス誌35号 巻頭言より
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