汗腺―その偉大なる排泄器官
  
 残暑―暑さもあと僅かの辛抱というところだろうか。暑い暑いと言いながら汗をかく毎日であるが、実はこの「汗」にはすばらしい恵みがある。汗は暑さをしのぎ易くするために人体に備えられた自然の冷却手段であるが、近年のエアコン普及の影響によって汗をかけない人たちが増えてきているようだ。エアコンの効いた部屋に長くいる人たちの汗腺機能は低下しているため、なかなか汗が出にくく、従って体温調節もうまくいかない。そのため冷房が効かない部屋では暑さに耐えられない、そこでどうしても冷房を利用する、汗腺機能はますます不活性化するという悪循環をたどるようだ。汗は体温調節の器官であると共に体内の毒素を排泄する重要な排泄器官でもある。人は、汗をかいていないように見える状態でも約8時間で500cc程の汗をかいている。汗の98%は水分で、2%は老廃物や不純物からなる固形物だそうだ。暑い中での発汗量は1時間ごとに約1リットル半もあり、例えば午前10時から午後4時までの8時間ではおよそ12リットルもの発汗量になる。その2%が疲労素や老廃物だというから、その量は約240gにも及び皮膚や衣服に付着している。活発な運動や水治療法でかく汗は、その量も1.5倍にもなるという。一方、汗をかかない人たちはこれ程の不純物を排泄することなしに体内に溜め込んでいるわけだ。その結果、疲労や頭痛、イライラ、肩こり、その他何らかの病気に至ることにもなる。自然療法の権威医であり、本誌でも連載中のDr.スラッシュは「これ程大がかりな器官が排泄のために備わっているとしたら,自然療法を用いる時にもその存在を見逃すわけにはいかない。」と言って、汗によって体内から老廃物を排泄する益を積極的に得るようにと勧めている。

 人体の汗腺の数は暑いところに住んでいる人ほど多く、日本人では約180万個から280万個で、皮下にある汗腺の表面積をすべて合わせるとおよそ3300平方メートル(約100坪)にもなる。汗腺の数は生後2歳半までに決定されるという。もしこの頃までに冷房の効いた部屋で過ごす事が多ければ汗腺数は少なくなり、生涯増えることがない。また幼少期に汗をかくことや運動することが少なければ汗腺機能は不活性化してしまうことも解っている。もうすぐ秋、残暑は短いが、暑さがまだ残されているうちに、子供も大人も暑い中で汗をいっぱいかいて、体内浄化システム―偉大なる排泄器官を大いに活用したいものである。

参考図書:自然を生かした治療法 (当協会発行)
トータルへルス誌15号 巻頭言より
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