命を救った抱擁

  米国のある雑誌に「いのちを救った抱擁」という記事に掲載された写真があります。ある病院で、1組の双子の赤ちゃんが生まれましたが、2人のうちの1人は明らかに命が間もなく消えてしまうと思われる状態でした。2人はそれぞれに保育器に入れられていましたが、看護婦の1人が「一緒に生まれてきた2人を1つの保育器に入れてあげたい」と言いました。それは病院としての規則には反する提案でしたが、その看護婦は病院側と争い、懇願して赤ちゃんを1つの保育器に入れて上げました。彼らは保育器に一緒に寝かされると、間もなく2人のうちの健康な方の赤ちゃんが、いとおしそうな感じでもうひとりに腕をかけて抱きしめました。すると、弱っていた赤ちゃんの心臓は一定の速度で脈打ち出し、体温は上って正常になったのです。

 病院側も、この弱った赤ちゃんに栄養を与え、程度の酸素を供給し、最善の救命処置をとっていたことでしょう。しかし、そうした最善の医療にもはるかに勝って力を与えたのは、姉妹の暖かいぬくもり、抱擁だったという事実には多くを考えさせられます。抱擁した赤ちゃんが、本当に姉妹をいつくしんで腕をかけてあげたか、それともただ母親の、あるいはお腹の中にいた姉妹のぬくもりを求めて自然に腕をかけたかはわかりません。しかしその暖かい抱擁は、小さくなっていた命の鼓動が脈打つほどに、生きるエネルギーを沸き立たせたのは確かです。

 愛する者が病にある時、何とか元気になって欲しいと、食品や薬など、物理的にありとあらゆる手を尽くし、回復を願いますが、この小さな赤ちゃんたちに起きた不思議な出来事にも見られる大きな力にも、もっと注目する必要がありそうです。

 愛する人たちを抱きしめるのを忘れないようにしましょう。
トータルへルス誌23号 巻頭言より
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