若さの泉
 古来から人は“若さの泉”を捜し求めてきたが、それは誰の手にも届く所にあったようだ。筋力、骨密度、心臓や肺の活力などの低下は、以前は避けられない老化現象だと思われていたが、機能低下の大方の理由は、体を活発に動かさない事によるものだと解ってきている。こうした事実を如実に現している人物の1人が、今年90歳になる米国のジャック・ラレーン氏だ。

 彼は子供の時には病弱であったが、青年時代に食事を菜食に替え、人参ジュースを飲み、運動を始めた結果、健康と立派な体格とを得た。彼は運動のすばらしさを伝えたくて、アメリカで運動ジムを開いた最初の人物であり、現在どこでも使われている運動機器をいくつも発明した。また当時は新しいメディアであったテレビを用いて30年間、体操の番組を担当した。彼は41歳の誕生日には手錠をかけて海を4.5km泳いだ。それは人々を驚愕させたが、さらに60歳の誕生日には両手両足を縛り、450kgのボートを引きながら泳いだ。10年後の70歳にはさらに力に満ち、どの船にも成人1人づつ乗せた70艘のボートを引きながら流れに逆らって2.4kmの距離を泳いだ。筋力も活力も運動の法則によって益々増進している。今でも、スリムで活力あふれる夫人と二人で米国内を講演で飛び回っている。

 もう1人、私たちに希望を与えてくれる方をご紹介したい。米国のホルダ・クルックスさんも体が弱い女性だったが40代になってから運動を始め、66歳で山登りに挑戦した。その後91歳までに86の山を征服し、米国で2番目に高い山のMt.ホイットニーを二七回も登った。91歳の時には富士山にも挑戦し登頂最高齢者にもなった。山登りの時には、自分よりもはるかに若いハイカーをすいすいと追い越す事がしょっちゅうだったという。彼女は老齢になっても健康で、好きだったリサーチアシスタントの仕事を90代まで続けることが出来、101歳という寿命を楽しんだ。

 往々、健康のために「食」には気をつけても、運動を続けることはなかなか難しい。しかし運動は、それをするごとに体は確実に強くなっていく。そしてどんな年齢から始めても、どんな弱い状態から始めてもその益を得ることが出来、爽快感というおまけもつく。誰にとっても遅くはない。六十代から登山を始めたホルダさんの様に、そして今なお元気一杯に活躍しているジャック・ラレーン氏の様に、楽しみながらできる何らかの運動を続け、私たちも“若さの泉”を手に入れたいものである。     

参考: www.jacklalanne.com
トータルへルス誌27号 巻頭言より
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