人よ、生き物たちよ、健やかであれ
 
 アフリカのザンジバル島に生息するサルで「キルクコロブス」という赤毛ザルがいる。
 彼らはたんぱく質の豊富な植物としてマンゴーやモモタマナの葉を食べるが、この2種は人間が持ち込んだ植物で、どちらの葉も栄養豊富な反面、フェノール系化合物をかなり含み、中毒を引き起こしたり、消化不良になることもある。このサルたちが、毒を含むマンゴーの葉やモモタマナの葉を食べた時はどうするのだろうか?彼らはすぐにも焼け焦げた切り株をかじりとってがりがりと食べる。あるいは炭焼き窯から木炭を集めてくるという。かれらにとって木炭は一種の解毒剤である。
 毒を含む植物を食べると中毒を起こすと知ったサルたちが、いつからどのようにして木炭をかじり始めたのか。木炭をかじるならばこれらの植物を食べても害はないとして常食にしているサルたちは、そのことを誰に教わったのだろうか?

 また、身近な動物たちも自然療法を心得ている。犬や猫なども、皮膚病、あるいは何らかのことで不調になった時にはまず断食をし、穴を掘り、治るまで土に体をつけて横たわっている。土療法である。この間、動物の体内では、化学的な調整が行われ,13種類ものガスが発散され、毒素が土の中に寝るという。

 また、自然の中に癒しのファクターを見出しているのは動物ばかりではない。薬草や野菜の医薬的特質の本を開いてみれば、ありとあらゆる症状に対して自然界には、十分な回復の手立てが備えられていることに驚嘆する。そして、薬効のひとつひとつを古来の人たちはどのようにして知っていったのだろうか?と不思議な気持ちになる。

 空気、水、日光、土、穀類、野菜、果物、木の実、これらが人間に及ぼす癒しの要素を調べてみるならば、われわれは実に豊かな癒しのファクターに取り囲まれて生活していることを認識させられる。そしてその豊かさに感嘆する。それは、あたかも「人よ、生き物たちよ、健やかであれ」との語りかけであるかのようである。天来の豊かな備えを十分に活用していただきたい。

トータルへルス誌 第4号 巻頭言より

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