医療従事軍を強化せよ
 
 米国の栄養学者のアイローラ博士は「腫瘍というのは、ガンに冒された細胞を正常細胞の群から分離させてかたまり(腫瘍)をつくり、固体生命の延長を図ろうとする試みにすぎない」と述べ、わが国の自然医学の権威・森下敬一博士も「ガンは血液の汚れの浄化装置である」と述べている。だから浄化装置である腫瘍を摘出すると、体はおのずと別の新たな浄化装置を造る営み<転移>をはじめるのだという。

 ガンの摘出手術が考案されたのは19世紀に入ってからであるが、昔はガンを放置しておくと腫瘍は皮膚を突き破るほど盛り上がってきたそうだ。1805年から1933年にかけて、イギリスのある病院ではで超進行ガン、あるいは、乳がん患者で手術不能とされた末期がんともいうべき250人の患者たちの自然経過を調査した記録がある。それによると、末期とされてから3年生存が約50%、5年生存が18%、7年生存は10%にものぼる。一方摘出手術を受けた乳がん患者の約50%は2年未満の生存であった。またある内科医が調べた胃がんの放置患者の5年生存率は64%、病院で何らかの治療を受けた胃がん患者のそれは平均50%であったという。そして闘病中の痛みや苦痛も、薬物を使用しない放置患者の場合のほうが少ない。ある80才の男性は、頭頸部ガンで放射線治療をしたあと、薬物は一切使用しないで自宅療養をしていたが、死を迎える1時間前まで意識がはっきりとしていて、眠るように静かに最期を迎えたという。また6号で紹介したDr.Dayの場合は、薬物を一切使用せず=抗がん剤の影響を受けないで=盛り上がった腫瘍が完全に消失した。

 人体は驚くほど巧妙に創られている。体はどこかに傷を受けるとたちまち修復作業にとりかかり、細菌やウイルスが侵入すればすぐにもそれらに抗し始める。言わば私たちの体内には優秀な医療従事者がいつも待機し働いていると言えよう。もし、私たちがそれらの働きを妨げさえしなければ、それらはついには見事に事を成し遂げてくれる。私たちのなすべきことは、体内の医療従事軍を弱体化させるものは何であるのかを知り、それらを強化し、すみやかに働きを遂行してもらう事、そのためにはどうすれば良いのかを知ること、これらは、現代人が他の何にも増して知るべき必須事項であるような気がする。そして体内の医療従事軍の見事さを体験する人々がますます現れていくようにと祈るものである。           
資料:患者よ、ガンと闘うな 近藤誠著 文芸春秋
   ガンは治せる 石原結實著 善本社
トータルへルス誌9号 巻頭言より
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