健康的なライフスタイルは国家をも支える

 米国のテロ事件で打撃を受けた米国民は、その再興のために、今できることは、国民が一生懸命に働き、支出の伸びを増す事であると考えているということだ。一方、米国経済の一模様として次のような事実がある。米国産の車は日本産の車に比較して、生産コストにかなりの差があるという事実はよく知られている。しかしその原因は一体何であると想像されるだろうか?ある経済学者の報告によると、自動車メーカーの職員の健康ケアに費やしているコストの差が車の価格にそのまま反映しているからだそうだ。米国の企業各社は所得税以外の支出のなんと平均で四十八%もの割合を社員の健康ケアに費やしているそうだ。社員の病欠、入院手当て、病気を理由とした休職や退陣などは、会社の経営に大きく響く。そしてそれらの経費は、そのまま車の価格に反映するというわけだ。

 タバコによる病気や損害においても米国政府はは約5億円以上を負担している。タバコ被害総額の43%は国民の税金から負担されている。
 わが国でも国民医療費が年々増加する中で、風邪による受診費用だけでも年間約5千億円(1995年時点の国民医療費からの推定値)を上回っているそうだ。
 もし、国民全体が風邪などの軽医療に対して家庭で適切な手当てを行うことができ、あるいは喫煙者の減少に努めるなら国家の支出はどれほど削減されることだろう。そしてこれらの努力は、国家の経済を助けるばかりではない。家計を助け、薬害から身を守り、さらには、正しい食習慣や適切な運動によって生活習慣病を防ぐことができる。中高年者が病気もせずに老後を迎え、やがて高齢化社会を支えるべく若者たちも、健康で思いっきり働くことができるなら、それこそ真に豊かな国家と言えるだろう。しかしあえて述べるが、このような事は夢物語ではない。現代社会を煩わしている多くの健康問題は、単純な方法で解消される。それは人間の体に害を及ぼすことをやめて、益になることをしてゆくだけだ。毎日の生活の中で、それらは簡単な事だとは言えないが、実に単純な事柄である。
 このような意味では、米国の再興も、わが国の経済安定も、言わば国民一人一人が健康的なライフスタイルを送ることに、その鍵があると言っても過言ではないような気がする。
                                    
トータルへルス誌11号巻頭言より
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