感染症に打ち勝つものは何か

 風邪をひきやすい季節、読者の皆様はいかがでしょうか?家庭で簡単な手当てをして切り抜ける方もあり、病院に通う方々もあるでしょう。風邪の時にもよく処方される抗生物質について、今号のDeRose先生の言葉には考えさせられるものがある。過去半世紀、抗生物質は多大な貢献をしてきたが、一方、抗生物質に慣れ親しんだ細菌たちはどんどん抵抗力をつけ、従来の抗生物質では勝てない細菌が登場し、院内感染した患者の命を奪う事も少なくない。抗生物質の恐さを知り、自分は飲まないとしている人でも、食卓あるいは皮膚などから抗生物質を摂っている場合がある。工場方式で飼育されている牛、豚、鶏などは、抗生物質が餌や水に混入されるか、注射の形で投与されているからだ。しかも、抗生物質に日々さらされたバクテリアは一層強くなり、それを含んだ肉や牛乳、鶏卵などを人間が食べると、人間の消化器官は耐性菌(抗生物質への抵抗をつけた菌)の繁殖場になり、感染リスクは一層高くなる。
 また、年々増えている抗菌用品には、抗生物質が使用されているということだが、細菌から身を守るために抗菌用品を使う事は、耐性菌による感染症の危険を増していることになる。どんなに抗菌靴下や抗菌ハブラシを使っても細菌やウイルスから自分を隔絶することは出来ない。病原菌は私たちの体内外にいつも存在しているからだ。      
 ある3歳以下の乳幼児がいる保育園で行われた調査によれば、 肺炎や中耳炎、髄膜炎などを引き起こす肺炎連鎖球菌が、園児の鼻の奥になかば常在菌のように存在していて、ペニシリンに耐性をもった肺炎連鎖球は、75〜94%もの園児たちに検出されたそうだ. このような菌は、身体の抵抗力が落ちれば、病原性を発揮してしまう。抗菌肌着を身に着けていても、実際感染による病気から守ってくれるのは、身体の免疫組織だ。それが何かで弱らない限り、身体はそう簡単に細菌などには負けはしない。
 免疫組織を強めるのにはどうしたらよいか、また弱らせるのは何か、これは健康を願う人の考えるべき第一のテーマであろう。その鍵は、ニュースタート健康法にある。正しく食べる事、十分に休息や水を摂る事、運動する事など、どれも皆、強い免疫組織を作るのには欠かせない。そしてそれは、細菌やウイルスとの戦いにおいて、大きな力になってくれる。我々人間がこのことに目覚めない限り、益々強くなる細菌と更に強力になっていく抗生物質との果てしない戦いを見続ける事になるであろう。
トータルへルス誌12号 巻頭言より
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