自然界に見る人間のための食品ガイド
 
 花粉症の人には辛い季節を迎えている。近年ますます増えている花粉症は、いつごろから出現したのだろうか。わが国では昭和36年までは花粉症の人は一人もいなかったという。ディーゼルエンジンの普及と花粉症の患者の数をグラフにしてみると、その増加率は互いにピッタリと一致するという報告がある。またアトピー性皮膚炎の場合は、食品添加物の生産総数と患者の数が正比例になっているそうだ。大気汚染物質、食品添加物など、本来身体に入れるべきでないものが、あまりにも多くなってきている。毎日毎時、口から、皮膚から、そして呼吸によって非常に多くの異物(抗原)が体内に侵入してくるので、それらに対抗して抗体を作っているうちに、いつしか防御システムがおかしくなり、本来は身体にとって敵ではなかったはずの小麦や大豆、さらには花粉に対してまで抗体を作るようになってしまったのだろうか。またこのようなアレルギー体質を作った土台の要因の一つとして、たんぱく質の過剰摂取が上げられる。

 われわれの食生活は、戦後50年の間に大きく変化した。「大きい事は良い事だ」「タンパク質が足りないよ」とテレビなどで繰り返し謳われ、子供の豊かな成長を願うには、肉も卵も牛乳も十分に食べなければならないと、徹底的に教育された。そして今、企業が誇大表示した<たんぱく質尊重の栄養学>の真偽がどうであったのかを国民総勢で見させられているような気がする。一体、何が真実で、何が偽りなのか。――食情報が氾濫する中で、すべての真実は、その食品を食べ続けて数年、あるいは何十年という年月を経てみなければ、その適不適は解らないのであろうか?

 鳥には鳥のための食べ物があり、動物それぞれのために食べ物がある。幾百年の年月が過ぎようと、自然界の生き物たちの食べ物は変わらない。そしてそれぞれに定まった食べ物を食べている限り、彼らの間にそれほど病気は見られないであろう。ところが人間が手を加えた食物を食べるようになった家畜には病気が増えている。人間もまた、人間が食べるものとして定められている食物だけを不必要な手を加えすぎずに食していたなら、これほど多くの病気で苦しむ事も無かったに違いない。自然界に供給されているすべての青草、木の実、果物、穀類を出来るだけ人間の手を加えない状態で食すこと、これが最も豊かで自然にかなった健康食であろう。
トータルへルス誌13号 巻頭言より
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