食事の質と持久力
菜食は数多くの病気への抵抗力をつける他にどんな益があるでしょうか。肉食をしていた人々が菜食を始めると、一時的に弱くなるように感じる事があり、強くたくましい感じがしないことを心配します。多くの人は、肉や牛乳は強い体を作ると教えられて成長してきました。そしてそれらの考えは見事に神話化しました。運動競技をする人々はもう何年も前から、動物の脂肪や蛋白質は持久力をつけるためには役に立たないと知っています。
スカンジナビアの研究者パー・オルフ・アストランド博士が、1960年に行った「食事の質と持久力」に関する古典的研究があります。それは、高度な訓練を受けた9人の運動家を対象に実験したものです。アストランド博士はそれらの運動家たちに、グループごとに、3つのタイプの食事をさせて、その食事を3日ごとに変えました。そして3日間それぞれの食事をした後に、各運動家に疲れきるまで高速で自転車のペダルを踏んでもらいました。その結果は図で表にしてあります。結果は菜食をした後の運動家たちの持久力が最も勝っていました。
肉の多い食事(蛋白質と脂肪の多い食事)をすると、およそ1時間後に疲れきってしまったのがわかります。肉、脂肪、蛋白質が少なく、植物性食品の多い混合食をすると、約2倍、合計で1.9時間高速でペダルを踏むことができました。ところが、純菜食をすると2.78時間踏み続けることが出来ました。
持久力のこの劇的改善は動物界を鋭く観察している人々には驚きではありません。何といっても、雄牛、象、馬は菜食で力や持久性にすぐれています。馬は何時間も高速で走ることができます。象は高速でまっすぐになんと10‐12時間走ることができます。その体重(6トン以上)で時速25マイルで10‐12時間まっすぐに走り続けることが想像できますか。一方肉食の大型の猫科動物、チーター、トラなどはスタート時はスピードが出ますが、およそ5分以内で疲れてしまいます。動物界では、持久力、すなわち長時間のエネルギーを出し続ける力は、菜食動物の大きな特徴なのです。
自然の食物に備わる完全栄養
栄養面から見て、健康の基礎をなすのはビタミンやミネラルのサプリメントではなく、豊富な果物、穀類、野菜を土台とした食事です。これらの食物を選択すると、ビタミンやミネラルの益だけでなく、まだ発見されていない多くの要素も提供してくれます。もしあなたがサプリメントに頼っているなら、科学者が植物性食品に含まれる健康的化合物をさらに発見し、実験室でその作り方または分離の仕方を突き止め、ついに市場で販売するサプリメントにするのを待たなくてはならないでしょう。一方、あなたが果物、野菜、未精白穀類、ナッツや種実をほどほどに食べているならば、科学者が栄養や成分を発見する以前から、健康に必要なすべての栄養を取り入れているのです。
自然界にある植物だけを食べる、いわゆる完全菜食の栄養的完全さについて、あらゆる科学的証拠があるにもかかわらず、そのような食事は蛋白質やカルシウムの面で足りないと信じている古い学者達がまだいます。1950年の、ハーバードの研究者による〈蛋白質の神話〉(トータルへルス8号から12号に掲載)の章で指摘されたように、完全菜食は蛋白質も全く十分であることを示しています。同じ章の中で、完全菜食は、肉や乳製品を消費している人々よりもカルシウム摂取量が少なくても大丈夫である事を指摘しています。植物食には緑の葉野菜などのように多種多様のすばらしいカルシウム源があります。
ビタミンB12について
しかし、完全菜食の食事には、ただ一つの栄養素について悩みがありました。それはビタミンB12です。興味深いことですが、このビタミンはほんの少量、一生の間にわずか、0.35グラムほど必要なだけなのです。ビタミンB12の必要は、ごくわずかであるにもかかわらず、全く欠乏すると貧血や神経系の問題などが生じる原因となります。最近まで、ビタミンB12に関し信頼できる植物からの摂取源を見つけた人は一人もいませんでした。その結果、菜食者の多くは欠乏を心配して、毎年血液検査してチェックしなければとか、安全のためにこのビタミンを食事に補強すべきだと感じていました。
B12―新しい発見
スイスの研究者、A・モザファル博士はある植物にはビタミンB12が含まれていることを発見しました。25,26さらに彼は、有機栽培された植物食には化学肥料で栽培されたものよりも、細胞の中により多くビタミンB12が含まれているのではないかということを確かめるための研究を指揮しました。彼の研究結果は図7:有機栽培植物の方に多いビタミンB12、で示しています。
B12は大豆、大麦、ほうれん草に見つかること、そして有機栽培されるとB12の量は目立って高くなることに注目してください。この研究はまたたくまに衝撃波を生み出しました。モザファル博士の発見は、ビタミンB12は従来育てられている植物には見つからないという既存の栄養学の立場に反します。化学肥料栽培植物でさえもビタミンB12を測定したと彼が報告して以来、ある栄養専門家達は彼の仕事は疑わしいと言明しています。
その研究は多くの疑問を起こさせました。B12の測定に間違いはなかったのか?研究に使った土壌に何か違いはなかったのか?本当にある種の有機栽培植物におけるB12の含有量は増えるのか?モザファルの研究を確かなものとするにはさらに研究が必要です。ある人々は今、完全菜食をし、ビタミンB12のサプリメントを用いなくても身体にとってすべての栄養の必要を十分満たすと断言しています。
何をどのように食べればいいの?
では実際には何をどのように食べればよいのでしょうか?
ここでは詳しい栄養学ではなく、具体的に何をどのように食べるかを紹介いたします。
献立例
朝 食 | 昼 食 | 夕 食 | |
和食の場合 | 洋風の場合 | 玄米、古代米などの穀類+温野菜+生野菜+豆類か海藻類+ごまなどの種子類 | 麺類、パン、いも類など+果物。あるいは果物だけ
※夕食は消化器に負担をかけないような軽い献立にする。可能ならば、夕食は抜く。 |
玄米、きび、あわなどの穀類+温野菜+生野菜+豆類か海藻類+ごまなどの種子類 各1品 | パン、オートミール+豆乳+ゴマバターなどのナッツ類 各1品果物2~3品 |
どのように食べるか
食事と食事の間は、5~6時間空けるのが理想。消化器を十分に休ませることができる。
間食はしない。間食は胃や腸内で発酵を招き、血液の汚濁につながる。
よく噛む。なかなか難しいのですが、これが習慣づけば、健康増進の大きな力となります。
避けたい食べ物
精製、精白されたもの(白米、白パン、砂糖、油)。
肉、魚、乳製品。
これらの食事法のためのレシピブックをご紹介します
「完全菜食料理ニュースタートクッキング」 A4変型判 95頁
A4変形版 117頁
手間がかからない洋風、和風、デザートなどを紹介。美味しいレシピが満載です。
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